2018年8月28日火曜日

【アルバム簡単レビュー】Twilight Dream


作家陣はほぼファーストと同じ。キープコンセプトで、3rdシングル「愛してます」と4thシングル「17才」を中心に据えたアルバムづくりながら、ファーストよりぐっと奈保子さんらしい溌溂とした精神が漲ったセカンド・アルバム。

新品で買ったジーンズが、最初はゴワゴワして心地悪かったものが、履いていくうちにどんどん自分の体にフィットしてきて、そのうちまるで自分の体の一部になったかのようになじんでゆく...。1stアルバムで感じられた奈保子さんと「レコーディング」の間にあったゴワゴワ感が、このアルバムではほとんど解消されて、奈保子さんが自分の声を信頼して、自在にのびのびと歌っている様子がサウンドの背後に浮かんできます。奈保子さんは早くも「レコーディング」という儀式をご自分のものにしてしまったようです。(クラシックの演奏家でも、普段のコンサートではのびのび演奏しているのに、レコーディングになると変に委縮してしまい、持てる能力を発揮できない人が少なくありません。)

私は、特にB面が好きです。A面の倍以上は聴いてますね。「ハートはもう春」の初々しさ、「イチゴタルトはお好き?」のキテレツ感(笑、ただし奈保子さんは真剣に歌っていらっしゃいます。それがいいのです!)。その鮮やかな対照。その後を、シングルとは別テイク(再収録)による「17才」の完璧な歌とサウンドがガッシリ受け止めます。実は隠れたアイドル・ソングの名品と言える「ふたりのWonderland」が、奈保子さんのアイドルとしての正統性を品よく主張し、最後は奈保子さん初のバラード「Twilight Dream」の美しい抒情で締めくくります。後年のアルバムのようにコンセプチュアルな選曲・構造ではありませんが、純粋に音楽の流れとして、これよりほかに考えられないほどバランスよく配置されています。

比べるとA面は、「愛してます」「そしてシークレット」「キャンディー・ラブ」というシングル系を多く収録したためか、並び自体にやや寄せ集め感が出てしまいました。B面が良すぎるのですよね。

ファーストに比べ、格段に奈保子さんらしい上質な歌と伸びのある声が聴けるセカンド・アルバム。名盤だと思いますが、まだ足りないものがあるとすれば、“夏”のカラッとしたイメージでしょうか。「スマイル・フォー・ミー」でのあの胸のすくような飛躍まで、もう少しです。

2018年8月21日火曜日

手紙 180821


奈保子さん、お元気にお過ごしですか。
今日は本当に取るに足らないお手紙です。

奈保子さんはお酒はたしなまれますか。たしなむ程度なら、お酒は人生のまたとない友になり得ますよね。ただ、私はたまに飲み過ぎてしまいます。ひさびさに昨夜、やってしまいました。赤ワインのフルボディを一本、空けてしまいました。ちょうど村上春樹さんの「騎士団長殺し」を読んでいて、グラスにウイスキーを注ぐ時の音を「親しい人が心を開くときのような音」と表現していたので、ちょっと高級なワイングラスにコルク栓を抜いたばかりのワインを注ぐ音もそんな音のように感じ、料理もそこそこに、ゆっくりとしたペースながら、しみじみと飲み続けてしまいました。

結果、寝落ちして、二日酔いの朝を迎えました(笑)。

そんな朝に、アルバム「Summer Delicacy」のB面をかけました。いつもよりやや音量を控えめにして。すると、私にとっては一番大切な、聴き慣れたアルバムに刻まれた音たちが、いつもとは違うように聴こえてきました。それは、言ってみれば、透明な朝の光、澄んだ空気、おいしい水のようでした。私は、からだの自然な欲求として、そのみずみずしい音たちをたっぷりとからだに吸収しようと、聴きながら何度も深呼吸しました。自分のからだを構成する小さな細胞たちが、ぽこぽこと目覚めていくのを感じました。

二日酔い特有の、重く淀んだ頭痛が、しだいに引いていきます。

奈保子さんは後年、環境音楽に取り組んでいらっしゃいましたが、自然を取り込んだ音楽が人間のからだにどう作用するか、という研究も、その取り組みの中で行っていらしたのではないかと想像しています。簡単に言えば「癒し」なのでしょうけれども、もっと深い、たとえば「再生」のような機能さえも、質の高い音楽は備えているのではないでしょうか。

今度二日酔いになったら、奈保子さんの環境音楽的なアルバムをセレクトしてみますね(笑)。