2016年8月31日水曜日

手紙 160831


奈保子さん、お元気にお過ごしですか?

今年の夏も、日本は奈保子さんの話題で盛り上がっています。リアルタイムのファンや、私のような後追いファンはもちろんですが、どうもそれだけでは収まりきらない広がりを見せているようです。芸能活動を休止されて20年、その間に奈保子さんの存在を忘れてしまっていた中年層や、あるいは逆に、その間に生まれたというkahoさんと同年代のティーンネイジャーたちからも熱く支持されています。ツイッター、ブログでの反応や週刊誌の記事などからも人気の再燃ぶりが窺えます。年初には「待ち受けを奈保子さんにすると運気アップ」なんて話題もありましたね。

その奈保子さん人気の復活と再評価が形となり、本日、写真集「再会の夏」とベストDVD「けんかをやめて」が発売されました。めでたし、めでたし!

私もじっくり楽しませていただきます。

何せ、めたるさんに触発されて、昨年末―マガジンハウスさん宛ではなかったものの―いくつかの出版社に奈保子さんの未発表カットによる写真集のリクエスト葉書を送るという無謀な(今となっては無謀ではない?)行動に出ていたので、感慨もひとしおです。

これとは別の話題になりますが、最近、売野雅勇さんが作詞活動35年を迎えるというニュースもありました。アサヒ芸能の記事に掲載された奈保子さんのお言葉は、もしかしたら写真集やDVDの発売以上に、私の心を何かこみあげるものでいっぱいにしてくれました。

『作詞活動35周年おめでとうございます。せっかくのお誘いですが、まだマスコミの前に出る状態ではなく、記念コンサートの出演を辞退させていただくことをお許しください』

記念コンサートは8月25日、藤井フミヤさん、鈴木雅之さん、中村雅俊さんら売野さんとかかわりの深かった歌手たちが集い、中野サンプラザで盛大に開催されたそうです。先の引用は、売野さんが奈保子さんに“ダメ元”で送った出演依頼状に対するお返事ですね。

奈保子さんの誠実なお人柄がにじみ出ている文章。そのなかに、“まだマスコミの前に出る状態ではなく”という表現があり、“まだ”という「予想される状態・段階に至っていないさま」をあらわす副詞を、慎重な奈保子さんがあえて―その言葉なしで通用するにも関わらず―お使いになっていることが、どうにも気になり、頭から離れないのです。

奈保子さん!
この際、はっきりお尋ねします。

もう一度「音楽」をおやりになりたいのではないですか?

どういう形でかは、わかりません。“復帰”という一種の流行に乗り、またマイクを持って歌うということではない気がします。でも、日本の芸能界からすっかり距離を置き、オーストラリアで主婦として日々の暮らしを送られていても、「音楽」のことは一日たりともお忘れになっていないのでしょう?そして、遠く離れた場所から日本をご覧になって、愛する祖国に「音楽」で届けたい大切なメッセージがおありなのでしょう?だからこそ、“まだ”という言葉を意を決してお使いになったのでしょう?

問い詰めるような書き方をしてしまって、ごめんなさい。

いつの日か、奈保子さんが、奈保子さんでしか成し得ない音楽を再び届けてくださること、気長にお待ちしています。音楽だってビジネスですから、この度のDVDや写真集の売り上げが、奈保子さんのこれからの音楽活動に弾みをつけることになったら、こんなに嬉しいことはありません。

『日本は暑いですか? オーストラリアは今、冬だから寒いです』

売野さんへのお返事のむすび。奈保子さんらしいお気づかいに、私もしみじみ嬉しくなり、また安らぎを得ました。

奈保子さん、オーストラリアはもうすぐ春ですか?
日本は今、美しい秋の訪れを待っているところです。


2016年8月24日水曜日

ペパーミント・サマー


作詞:伊藤アキラ
作曲:尾関裕司
編曲:若草恵

またまた妄想劇場から始めます。

もし私がPDだったら、シングル「夏のヒロイン」のカップリングには「ペパーミント・サマー」を採用しただろうなぁ...。私のカップリングの好みは「少しだけNon Non」の記事をご覧いただければと思いますが、早い話、A面とB面の曲が音楽的に拮抗していて、似ているようだけど実は違うというようなタイプの曲の組み合わせが好きなのです。

「ペパーミント・サマー」は、アルバム「サマー・ヒロイン」の8曲目。「夏のヒロイン」「夏はSexy」から続く、怒涛の夏ソング3連発を締めくくる曲です。

夏の日差しに照らされて、青い渚で光の中の恋人に熱いまなざしを送る「夏のヒロイン」に対し、「ペパーミント・サマー」の舞台は南風が心地いい月夜の浜辺。カップリングにした場合、昼と夜の対照も絶妙ですね(自画自賛 笑)。

夏の夜の、いくぶん重たい水色の湿気を含んだ風。「夏のヒロイン」や「夏はSexy」とは、微妙に色調を変えた奈保子さんの歌声が、そんな肌をくすぐるような夜風を運んできます。

  ♪Oh, Blue! Summer Dreaming~
  ♪おねがいよ Kissをして~
  ♪夢もまぶしい Peppermint Summer~

この3つのフレーズは、奈保子さんが思い切り声を張るところ。いつもの奈保子さんなら、空に向かって声がスコーンと突き抜けていくところですが、「ペパーミント・サマー」での奈保子さんの声は、まるでたぷたぷと揺れる海水が水平線を超え、夜空までも浸していくかのように、あたりを豊かに、やさしく満たしていきます。それは、母なる海に抱かれるかの如き心地よさ。この曲を聴くたび、私は時を忘れ、奈保子さんの声にいつまでも浸っていたくなります。

曲は、イントロ(♪Oh, Blue! Summer Dreaming~)、Aメロ(♪誰も来ない海 バージンビーチ~)、Bメロ(♪私は泳ぎつかれ 白い砂の上で~)、サビ(♪おねがいよ Kissをして~)という構成。

びっくりするのは、2番まで終わって突如出てくる次の部分です。

  あなたと私は ピッタリタリ
  渚でくちづけ ピッタリタリ
  今夜は La La La Love You

まったく新しい旋律で、下手をするとちょっとコメディ・タッチになってしまう部分ですね。しかし、奈保子さん、さすがです。人によっては、この雰囲気たっぷりな曲に逆効果と取られかねない“ピッタリタリ”に、上品さ、愛らしさ、そしてある種の軽みを与えています。♪季節が過ぎたあとに何が残るかしら~などと歌い、ずっと真剣な表情を崩さなかった彼女が、一瞬クスッと茶目っ気を示して微笑むかのような、そんな心くすぐるワン・シーンが目に浮かんで来るのです。

あゝ、いい曲だなぁ...!

私も永遠に奈保子さんの曲と“ピッタリタリ”でいたいです(笑)。


2016年8月20日土曜日

NAOKO FAN MEETING 再会の夏 2016


今年の夏も奈保子さんファンは盛り上がっています。

8月31日には写真集とDVDが同時発売。DVDはまだしも、約30年も前のアイドルの写真集が新刊としてこの時代に出版されるというのは極めて異例だと思います。Amazonのランキングでも2~3位と上位につけていて、あらためて奈保子さんはずっと愛され続けているんだなぁ、と感慨深くなる夏です。

NAOKO FAN MEETING という特設サイトでは、写真集のカバー写真を当てるクイズが出されたり(私は見事にハズレました 笑)、当時の月刊「平凡」の編集者さんと思しき方の執筆によるコラムが連載されたり、いくつか楽しい仕掛けが用意されました。

その中で、私のような後追いファンには困った仕掛けもありました。“河合奈保子ライブ”の思い出大募集!というものです。

そもそも行ったことがないのですから、書くことには無理があります。でも、なんでも無理やり書いてしまうのがsmileformeです(笑)。どうせ掲載されるはずもありませんから、ここに公開してしまいます。

写真集&DVDの発売まであとわずか。みなさん、奈保子さんの熱いライブと美しいお姿で、厳しい残暑を乗り切りましょう!


 -----以下投稿した文章-----

奈保子さんのライブ...

私のような後追いファンにとってはちょっと切ない響きがしますね。ライブに参加した経験も、思い出も、ないのですから。

でも、そんなことにヘコたれてたら後追いファンなどやっていられません。ライブ盤を見聴きしながら、「奈保子っちゃ~ん!」「かわいいな、う~レッツゴー!」などと声を枯らし、我を忘れて応援している40代半ばの自分がたまに鏡に映ります。♪この髪もくちびるも恋してるの~なのです(笑)

後追いファンにとって奈保子さんのライブは「思い出」ではなく、「リアル!」なのだと言えるでしょう。デビューから35年以上経っても、奈保子さんの音楽は輝き続け、そのライブはいまだにファンを感電させています。まさに、永遠の生命。

怒涛の盛り上がりを見せる奈保子さんのライブにあって、私が特に好きなのは次のような奈保子さんのファンへの呼びかけです。

「いきますよ~、いち、に、さん、あいっ!」
(「夏のヒロイン」や「ラブレター」などで)

息を切らし必死に歌っている最中なのに、奈保子さんの言葉づかいは決して乱暴にはなりません。その謙虚さと優しさ。次世代に伝えていきたい日本人の美徳ですね。

制作の皆様、この度のDVDと写真集の発売は本当に嬉しい出来事でした。有難うございます。

最後に...
奈保子さんとご家族の皆様が健やかに楽しくお過ごしになられていることを、切にお祈りしています。



2016年8月3日水曜日

三日月の草原


作詞:河合奈保子
作曲:河合奈保子
編曲:清水信之

最近のヘビーローテーション。歌手としての奈保子さんの、現時点での最後のアルバム「engagement」(1993年11月発売)の8曲目に収められています。

私は「癒される」という言葉が、とても安易で、主体性のかけらも感じられないので好きではなく、自分の文章であまり使いたくはないのですが、あえてこの曲を簡単に評すなら“癒し系”。自分の精神状態がbusyであっても、freeであっても、その音を耳にすれば心が透き通っていき、全身がやわらいでくる...。そういうリラクゼーションの効果を持った曲が「三日月の草原」です。

リラクゼーションと言えば、奈保子さんの環境音楽への傾斜を振り返らずにはいられません。1989年と1990年に1枚ずつ、The Gentle Windの名義で奈保子さんは環境音楽のアルバムをリリースしています。サティの「家具の音楽」やケージの「偶然性の音楽」を始発点とし、ブライアン・イーノが提唱した「環境音楽」(Ambient Music)は、「聴き手に向かってくるのではなく、周囲から人を取り囲み、空間と奥行きで聴き手を包み込む音楽」と定義されています。

デビューから10年近く、ずっと「河合奈保子」の記名性を背負ってきた奈保子さんが、誰の音楽であるか主張しない、集中して耳を傾けることを強要しない、自然や環境と融和した心地いい“音響”に、歌謡曲の衰退と時期を同じくして惹かれていったことは、ある種必然であったように思われます。

その「河合奈保子という記名性の放棄」の時期を経て、ふたたび河合奈保子として“復帰”し、「歌手・河合奈保子」そして「作曲家・河合奈保子」のひとつの結論としてまとめあげたのがアルバム「engagement」である―私は今、そんな風にこのアルバムを受け取っています。

どうも「engagement」の曲を語るとき、曲そのものよりアルバムの話が長くなりますね(笑)。好きなんですよ、このアルバムが。そうして、長い紆余曲折を経て(前作「ブックエンド」から実に3年半!)、このアルバムを、このような形でまとめあげた音楽家・河合奈保子さんに、私は心の底から共感し、尊敬の念を寄せているんです。

さて、曲はAメロ(♪逢えなくなってからあなたの夢を見るの~)、Bメロ(♪伏せた瞳の奥で~)、サビ(♪夢の中で誰も嘘をつけないの~)という歌謡曲の古典的な構成。しかし、この曲には大衆の目をひくどぎつい色彩も、パンチの効いた味付けもありません。小川をさらさら流る透明な水のように、木立をすり抜けるさわやかな風のように、音が自然に移ろってゆくだけです。

デビュー曲「大きな森の小さなお家」以来、奈保子さんが数多歌ってきた月に関する歌であること、奈保子さんご自身が作詞にも取り組んでいらっしゃること、奈保子さんの憧れの存在である竹内まりやさんの曲でよく見るお名前の清水信之さんが編曲されていることなど、「三日月の草原」にはまだまだたくさんの切り口がありそうです。でも、今の私は、奈保子さんが苦悩と葛藤の末たどりついた透明で自然な音の世界に、ただひたすら浸っていたいと思います。

音楽学者はこの曲を「環境音楽」とは呼ばないでしょう。しかし、「三日月の草原」の音楽の中味こそ、「聴き手に向かってくるのではなく、周囲から人を取り囲み、空間と奥行きで聴き手を包み込む音楽」と言えないでしょうか。