2015年8月29日土曜日

CD「私が好きな河合奈保子」


ツイッターでも報告いたしましたが、発売日の8月26日はワイフとおデートで東京へ出かけることが決まったので、前日の時点で発送連絡のないアマゾンをキャンセルし、桂花でラーメンをいただくというウハウハプランもくっつけて、パネル展をやっている新宿のタワーレコードまで足を運んで買い求めました。ワイフに奈保子さんの写真パネルとのツーショット写真を撮ってもらったりして、そんなくっついたら奈保子ちゃんが隠れちゃうよとか、もそっとかがんだほうが奈保子ちゃんと顔が近づくよとか、40過ぎの二人が馬鹿みたいにはしゃいでおりましたので、周囲の冷淡な視線を感じなくもなかったのですが、まぁヨシとしましょう。液晶テレビには1984年のイーストのDVDが流れていましたが、「If you want me」や「夏の日の恋」はワイフも知らなかったらしく、「私が知らない曲だ...」と訝しげな表情を浮かべるので、奈保子さん名義の曲が300曲以上存在しているのに対して、ワイフが知っているのはカラオケ(ジョイサウンド)に登録されている50曲程度でしかないことを説明し、なんとなく納得してもらったりもしました。

ということで、とにかく無事、楽しく入手することができました。タワレコの情報をくださった皆様、ありがとうございました。店頭で買うのはやはりいいものですね。

前回8/23付ブログに、公式サイトで発表されているリクエストの得票順位を貼り付けましたが、アルバムにはその順位のとおりの順番で曲が収録されています。j-boyさんもご指摘のとおり、冒頭の「スマイル・フォー・ミー」から次の「ハーフムーン・セレナーデ」への落差といったら“まぁ!”。また、Disc2冒頭の「Sky Park」から「ハリケーン・キッド」へのつながりも、通常は有り得ません(笑)。私は、今回はこれでよかったのだと思います。ファンによる投票で収録曲を選ぶという切り口こそ、今回の企画のもっとも大事な点であって、アルバムとしてのまとまりなど、今回に限っては二の次であっても構わなかったと思えるからです。White Autumnさんがご指摘のように、今回の投票は35年経過した現時点での奈保子さんファンによる奈保子さんの曲に対する「真価の評価」であったことも、また重要です。歌謡曲ではないジャンルに通常身を置く私としては、曲の、時代性を超越した真価というものは、少なくとも50年はたたないと定まらないと考えておりますが、35年という時間はやはりそれなりに相当な重みを有していそうです。売上では断トツトップの「エスカレーション」が9位にとどまったり、一般的な知名度では最高ランクに位置するはずの「けんかをやめて」がベスト10に入らなかったり(12位)、そこにはある一定の年月を経たところでの、コア・ファンたちによる、軽んじられるべきではない「評価」が見えてきます。それ故、ブックレットにアルバム&B面曲のランク外の曲が29位まで掲載されていたのはとても嬉しかったですが(「浅い夢」が19位に、「涼しい影」が20位に入っていたのを目にして、何故か涙しました)、シングルに関しては追加情報がありませんでしたので、ネット上でも結構ですから、ぜひ全ランキングを発表していただきたく、コロムビアさんには謹んでお願いしておきます。

CDを最初から再生しますと、先述のように、通常はありえない曲順ですから、その落差にびっくりし、奈保子さんの活動した時代の新旧を行ったり来たり旅しながら、その多彩な曲想と、あらゆる曲に誠意を尽くして歌い切る奈保子さんの歌にあらためて感動し、その音楽性の幅広さ、懐の深さを見せつけられるわけですが、しかし、通して聴いてみて、私の心を強く突き刺して離さなかったのは、奈保子さんのいつも変わらぬ「きれいさ」であり、「きれいな心の発露であるところの音楽」でありました。結局、奈保子さんは、どういう曲が選ばれたとか、どういう曲順だとか、そういうことはあっさり超越してしまっていて、他の歌手には求められぬとびきりきれいな音楽を奏でた音楽家として、私たちの手の届かぬ遥かな高みに存在していらっしゃるのだということが、つくづく、そしてひしひしわかってしまうという、そういうCDなのでした。

ちょっと期待していた奈保子さんご本人からのコメントは、ブックレットにも掲載されていませんでした。残念ですが、奈保子さんが「その時期ではない」と判断されたことでしょうから、次の機会を楽しみに待ちたいと思います。

そして、少し気が早いかもしれませんが、次の40周年記念には(それより前でももちろん大歓迎ですが)、夜のヒットスタジオ、レッツゴーヤング、ミュージックフェア等での奈保子さんの映像をまとめたDVD(BDならなお良し)をどうかリリースしてほしいと思います。あくまで「歌手」という立ち位置にこだわった奈保子さんの活動の中で、レコーディング、ライヴと並び、音楽番組への出演はもっとも重要な柱のひとつだったはずです。YouTube等で見るそのパフォーマンスの素晴らしさは、もはや言うまでもありませんね。それらをきちんとした形で出版し、後世に残すことは、レコード会社やマネジメント会社の使命と言えます。このような閑古鳥の鳴くブログで言っても仕方のないこととは思いますが、それでも、その仕事は「使命」であると、あえて、強く申し上げておきたいと存じます。

2015年8月23日日曜日

リクエスト結果発表!


ファンが選んだデビュー35周年記念アルバム「私が好きな河合奈保子」のリクエスト結果がコロムビアの公式サイトで発表されました。シングルの19位~11位までとアルバム&B面のベスト18がまず発表され、シングルのベスト10は小出しに発表していくというニクい演出。この演出には私も見事にやられ、発表予定日は暇さえあればコロムビアのサイトをチェックしていました。何だか妙に盛り上がった一週間でしたが、そのお祭り気分も今日でおしまい。

第1位は最愛の「スマイル・フォー・ミー」でした!
ほんとうに嬉しいです!

ツイッターにも書きましたが、この曲は「河合奈保子」というキャラクターを自然に、しかも十全に示した曲だと、あらためて思います。「UNバランス」のようなディスコ歌謡を格好よく決める奈保子さんも、「疑問符」のようなバラードをしっとりと歌い上げる奈保子さんも、「コントロール」のような激しい曲を“吼える”ように歌う奈保子さんも、私は全部好きですし、曲を“自分色”で覆い尽くしてしまうことなく、作品本来の持ち味を引き出すように歌う奈保子さんの音楽性こそ、他のアイドルと奈保子さんとを大きく分かつポイントだと思っています。

でも、「スマイル・フォー・ミー」はまた別のパターンを示します。奈保子さんは、おそらく、何も考えずに、楽譜を見たらそのまま、歌いたいように歌えばよかった。そういう、河合奈保子のために神が授けたかのような奇跡の曲に(馬飼野先生に感謝!)、5曲目のシングルで出会えた奈保子さんは幸せでしたよね。「河合奈保子?ああ、あのスマイル・フォー・ミーの人ね」と言われて、何ら支障がないわけです。(なかには代表曲が悲劇的な曲というアイドル歌手もいますよね。)

ハーフムーン・セレナーデ」が2位でした。河合奈保子さんをアイドルとしてよりアーティストとして評価する向きには、1位じゃなくて残念な結果だったかもしれません。私はと言えば、奈保子さんをどちらかのカテゴリに分類したくない気持ちが強くあります。さすがに、デビュー曲「大きな森の小さなお家」では一生懸命さ―それは素人くささとも受け取れる―がまさっていましたが、2ndシングル「ヤング・ボーイ」になると奈保子さんは別人のように顔が引き締まり、完全にプロの仕事ぶりを見せています。もうその時点で、奈保子さんは「アーティスト」と呼びうるのです。「スマイル・フォー・ミー」だって―これ実はかなり難しい曲ですよ―これだけ魅力的に歌える人が他にいるでしょうか?自作曲時代(1986年以降)の奈保子さんをアーティストとして高く評価している方はブログなどでもかなり確認できるだけに、むしろ私は、アイドル時代の奈保子さんの持つ「アーティスト性」を、このささやかなブログでさらに追求していけたらと願います。

さてさて、まぁとにかく楽しい一週間が終わりました。私のガチガチに緊張した奈保子さんへのメッセージが公式サイトに掲載されたりもしました。リクエスト結果、自分のベスト10予想、メッセージ掲載の写真を、ここに良き思い出として記録しておきましょう。そして、8月26日のアルバム発売(と生写真の当選!)を楽しみに待ちます。






2015年8月21日金曜日

夏はSexy


作詞:伊藤アキラ
作曲:尾関裕司
編曲:若草恵

White Autumnさんのツイートによると、岩崎宏美さんと八神純子さんはお二人そろって「若い頃はつるんつるんの声で、ハスキー(ヴォイス)に憧れていた」そうです。そのお二人の歌を聴いて育った奈保子さんは、果たしてどんな声に憧れていたのでしょうね...。

私自身は、男声合唱団でずっとセカンド・テノールでした。オーケストラに例えれば、2ndヴァイオリンもしくはヴィオラに相当。“内声”と呼ばれ、目立たぬ声でハーモニーを作ることに徹する黒子的存在です。パリッと格好よく主旋律を歌うトップ・テノールに、憧れや嫉妬の気持ちがなかったといえば嘘になります。

人は、自分にはない要素・性質を持つ人に憧れの気持ちを抱きます。どちらかと言えば奥にこもりがちの声で、鈍重なリズム感でしか歌えない私は、奈保子さんに“再会”した瞬間から、奈保子さんの声とリズム感に限りない憧憬を抱き、今に至っています。

「奈保子さんのように歌ってみたい」。そんな甘っちょろい欲望をいとも簡単に打ち砕き、崇拝の対象になるくらいに手の届かぬ“歌”として私の前に君臨する歌。それが「夏はSexy」です。アルバム「サマー・ヒロイン」では、大ヒットシングル「夏のヒロイン」の直後に置かれるという損な並びを従容と受け入れる曲ですが、そんな悪条件をものともせず、一点の曇りもない明るさ、輝きを、「夏のヒロイン」よりさらにダイレクトに、たたみかけるように伝えてくる曲です。♪突然街に光があふれ~という歌い出しの歌詞そのままの曲なのです。

♪世界が Dance Dance Dance~、♪ハートが Swing Swing Swing~など、サビの英単語の連発が妙に耳に残ります。「夏のヒロイン」での恋の芽生え、ときめきを経て、今や女の子は自分の魅力も十分認識し、夏空の下、恋のよろこびを120%謳歌しているのですね。振り返る必要のまったくない、衝撃的とも言える明るさが、その単純な英単語のリピートから発散されます。まさに、目もくらむほどまぶしさ!でも、奈保子さんの聴き手としては、サビの後半にも引き続き注目したいところです。

  あなたの他に恋の相手はいない
  誰より好き あなたが好き
  Kiss a Kiss a Kiss a Kiss a Kiss

歌手として当然意識するのは、♪誰より好き あなたが好き~の難しい裏拍入り。さらに、7拍の中で一般的な強拍、弱拍の関係を無視し、等間隔で5回"Kiss"を刻まなくてはいけない締めのフレーズです。奈保子さん、ものすごい切れ味のリズム感と言葉のさばきで歌っています。これは誰にも真似できません。強烈です。強烈すぎて、聴いていて笑みがこぼれます。まったく勝ち目なし。ぶっちぎり。お手上げです!


2015年8月5日水曜日

潮風の約束


作詞:来生えつこ
作曲:来生たかお
編曲:大村雅朗

これまで何回も告白しております通り、私は全般に歌を聴くとき、歌詞は二の次になります。「この歌は詞が素晴らしいのだから、詞を聴こう」と意識してもダメ。40年来の癖ですから、もう治らないのかも知れませんね。

しかし、そんな私でも特別意識することなく、歌詞が自然に頭の中に入ってくる曲というのも存在します。大好きなアルバム「Summer Delicacy」に収録された「潮風の約束」は、その稀な例の一つです。聴いている間、私の耳(脳)が、ほぼ50対50の割合で歌詞と音とを同時に聴取しているのが、なんとなく自分でもわかります(他の曲を聴いている時とまったく感覚が違うので)。そうして、心のなかで歌詞と音がぴたりと一つにつながるのです。

来生さん姉弟のいつもの流儀で、この曲も、終始穏やかな調べを保っています。感覚的には「地味な曲」に分類されるでしょう。でも、ここには、他の奈保子さんの曲ではあまり見られない「映像喚起力」と「驚きの物語性」があり、私の中で本当に特別な1曲になっているのです。

  ひらけてく 海は瑠璃色
  バスは今 ゆるいカーブで
  風を切り あなたの町へ向かうの
  腕時計の針をのぞく

太陽が海に反射して瞳を心地よく刺激する光のさざ波、そのさざ波から送られてくるやさしい潮風、鳥たちがおだやかに呼び交わす鳴き声...。海辺の町のいつもの光景をさりげなく音で描写した前奏に続き、奈保子さんが夢のようにやわらかな声で、♪ひらけてく~と歌いだします。映像はゆっくりと主人公の女性をクローズアップ。そう、これは彼の暮らす海辺の町に向かう彼女の「旅の歌」です。

「カーブ」という言葉が象徴的に使われています。無論「カーブ」は行く先の見えない心のときめきと期待感を暗示する言葉。主人公はこれまでにも何度かバスに揺られ、彼の住む町に来たことがあるはずですが、後述するように、今回は特別な旅なのです。

淡々として叙唱風のAメロ(♪ひらけてく~)、上昇音形の繰り返しで期待に胸をはずませるBメロ(♪終点に着いたら~)、あくまでも控えめに気持ちを解き放つサビ(♪潮風心地良い香りにつつまれ~)という音楽の構成。「微風のメロディー」でも同じようなことを書きましたが、この曲もまた、彼と再会し、彼と暮らすまでの、幸せに至る“前奏曲”と言うべき曲です。だから、気持ちは“全開”にはならない。奈保子さんも、声を張り上げることを注意深く避けています。節度や余韻といったもの、いわば「情趣」が重んじられていて、ひとつひとつの言葉にあたえる陰影はこの上なく細やかに施されているのですが、しかし決して過剰にはならぬよう細心の注意が払われている。あゝ、これは本当に奈保子さんでしか歌えない、抑制と解放の高度なバランスが求められる歌。

「いい曲だなぁ。歌詞もめずらしくすんなり頭に入ってくるし。目立たないけど、実はクラスに必ず一人はいるしっかり者でかわいこちゃんみたいな曲だ...」。初めてこの曲を聴いた時、私はこんな感想を抱きつつ、1番まで聴き終えたのでした。

あゝ、愚かな私。この後、2番で受ける衝撃を、この時点では予測し得ませんでした。

2番に入り、旅の目的地であるバスの終点がいよいよ近づいてきます。この曲、本当に歌詞がよく聴こえてくるなぁ。ここで主人公は窓越しの美しい景色を見ることをやめ、目をつむり、彼と交わす最初の言葉を考え始めます。しかし、何を言えばいいか思いつかない。そんな彼女の心象風景が、詩的に、ふんわりと、言葉と音から立ち上がってきます。すると...

  約束の一年 心は決まってる
  この町に住むのよ

あゝ、心の衝撃。ずどーん。

これは2番のBメロの歌詞です。ここに至って初めて、これが単なるデートの歌ではなく、彼女の一大決心の歌なのだということがわかります。しかも一年...。理由はわからないけれど、彼女も彼も一年待つことにして、潮風が心地よい去年の同じ季節にいったん別れた。それで、一年経っても彼女の心が変わらなければ、一緒に住むと決めた。惹かれあう二人にとって、一年という時間は想像を絶する長さだったに違いありません。しかし、今、彼女はそれを乗り越え、重大な決心をもって彼のもとに身を寄せようとしている...。

この時、1番の歌詞がふと思い出されます。こんな特別な気持ちでこのバスに乗ることは、これより先おそらくないでしょう。だから、「飛んでゆくまぶしい景色」が本当に愛おしく、「ポケットにみんな入れたい」と思ったんだ...。

  右手に水玉のハンカチ結んで
  窓から手を振れば
  全てを あなたはわかるはず
  答えを わかるはず

私がそんな感慨に耽っていると、サビの♪右手に~と伸ばす奈保子さんの歌声が頭上から降り注いできます。音楽はよどみなく流れ、ひとところにとどまることを知らず...。奈保子さんの凛とした歌声が、私たちを物語と映像の世界に連れ戻してくれます。彼女は言葉ではなく、ハンカチを窓から振ることで、自分の決心を彼に伝えることにしたんですね。映画のワンシーンにでもなりそうな、印象的な光景。

彼女から彼への全面的な信頼(それは「愛」と言い換えてもいいでしょう)を歌ったところで、この愛すべき曲は閉じられます。最後の短いフレーズの繰り返しはありますが(♪答えをわかるはず~)、サビの繰り返しはありません。シンプルな完成度の高さを誇るこの歌には、1番のサビを繰り返すというよくあるパターンなど、まったく必要ないのです。